の軌道伝いに帰って参りましたところが、ちょうど姪浜《ここ》から程近い道傍《みちばた》の海岸側に在る山の裾に石切場が御座います。切っております石は姪浜石《めいのはまいし》と申しまして黒い柔かい石で、お帰りに御覧になればお解りになりますが、福岡の方から参りますにも、又、こっちから福岡の方角に出ますにも、是非とも通らなければならぬ処で御座います。……あの石切場の石が屏風のように突立って、西日を赤々と受けております奥の方の薄暗い処へ、四角い帽子を冠った洋服の姿がチラリと動いて見えたように思いました。
 ――私は眼が悪う御座いますが、これこそと思って近寄って見ますと、案《あん》の定《じょう》若旦那様で、高岩の蔭に腰をかけて、何か巻物のようなものを見ておいでになります。私は、そこいらに積み重ねてある切石の上を伝うて、ちょうど若旦那の頭の上に出ましたので、ソロ――ッと首を伸ばして覗いて見ますと、それは長い長い巻物の途中と思われる処で御座いましたが、不思議なことには、それは只の白い紙ばかりで、何一つ書いて無いもののように見えました。しかし若旦那の眼には、何か見えておりましたらしく、その白い処を一心にな
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