さんのお家はもう、何とのう浮き上るようなあんばいで……ヘイ……。
 ――ところが恰度《ちょうど》昨日《きのう》(四月二十五日)の事で御座います。福岡|因幡町《いなばちょう》の記念館という大きな西洋館の中で、高等学校の生徒さんの英語の演説会がありましたそうですが、若旦那様はその時に、卒業生の総代になって、一番初めの演説を受持って御座るとかで、高等学校の服を着て行こうとなさるのをお八代さんが引止めて、大学校生徒の新しい服を着せてやろうとしました。その時に若旦那は苦笑いをしながら、どうしても着て行かぬ。まだ早いと云うて逃げようとされますのを、お八代さんが無理矢理に着せて、あとを見送りながら、さも嬉しそうにして涙を拭いておりました態度《ようす》が、今でも眼に縋《すが》っております。今から思えばあの時が、若旦那の大学服の着納めで御座いましたろう。
 ――ところで又、そのあくる日のきょうは今も申します通り、若旦那様とオモヨさんの、お芽出度《めでた》い日取りになっておりましたので、私共も一昨日《おととい》から泊り込みで手伝いに参っておりました。オモヨさんも高島田に結《ゆ》うて、草色の振袖に赤襷《あか
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