てた学校なら、お寺も御先祖が建てさっしゃったお寺で、跡目相続人《あととり》の若旦那(呉一郎)は大幸福者《おおしあわせもの》で御座いますのに、思いがけない事が出来ましたもので……。
 ――若旦那様は、温柔《おとな》しい、口数の尠《すくな》い御仁《おひと》で御座いました。直方《のうがた》からこちらへ御座って後《のち》というもの、いつも奥座敷で勉強ばっかりして御座ったようですが、雇人《やといにん》や近所の者にも権式を取らしゃらず、まことに評判がよろしゅう御座いました。それに今までは呉家の人と申しましても後家のお八代さんと十七になる娘のオモヨさんと二人切りで、家《うち》の中が何となく陰気で御座いましたが、一昨年《おととし》の春から若旦那が御座らっしゃるようになると、妙なもので、家内がどことなく陽気になりまして、私共も働らき甲斐があるような気持が致して参りましたような訳で……ヘイ……。そのうちに、今年の春になりましてからは又、若旦那様が福岡の高等学校を一番の成績で卒業して、福岡の大学に又やはり一番で這入らっしゃると、そのお祝を兼ねて、若旦那とオモヨさんの祝言《おめでた》があるというような事で、呉
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