ざること。
=同= 同婦人は、姪《めい》の浜《はま》なる実家に、近き親戚の尠《すくな》き旨を洩らせるが、田舎の富家には往々にして此の如く血縁的に孤立せる家系あり。而して、その孤立の原因は多くの場合、その家柄もしくはその血統に絡まる伝統的の悪風評もしくは、或る忌《い》むべき遺伝的の素質あるがために、附近の者が姻戚関係を結ぶを好まざる結果なるを以て、呉家も、或はその種の家柄に非ずやと疑わるる事。
=同= 妹千世子が家出の原因は刺繍と絵画の修業を目的とせるものに外《ほか》ならざる旨、繰返して弁明せるも、前項の疑点と照合する時は、尚、別の意味をも含まれいるものの如し。すなわち千世子は、姉と共に同家に居りては、到底結婚の不可能なるべきを予感し、又は他国に於て、呉家の血統を繋《つな》ぎ残すべく、姉との黙契の下に家出したるものにして、これあるがために、その行衛《ゆくえ》捜索に対する姉の態度は、稍々《やや》不熱心の嫌《きらい》なきに非ざりしやの疑を存する余地あり。且つ、同姉妹が二人共、女性としては珍らしき気嵩《きがさ》なる性格の所有者なる事実よりこれを推せば、両人の間にかかる黙契の成立し得べき事は想像
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