るは、同占断者が、同女との対話中に、同女の言葉の中に含まれたる或る事実を推測して、斯《か》く云いたるに非ずやと疑わるる事。
=八代子の談話中= 直方《のうがた》署の留置場に於て、初めて呉一郎に面会したる際「お前は何か夢を見ていやしなかったか」と尋ねしは「嘗《かつ》て夢遊病の事を耳にせしためなり」云々と弁明せるが、一婦人、特に農家の一主婦としての教養以外に、何等の高等なる学識を有せざるべき筈の八代子が、此《かく》の如き非常事件に際し、かかる超常識的に高等なる、精神科学的現象の存在の、可能なる事を考え得るさえも、不可思議というべきに、更にこれを実地に当て嵌《は》めて、直ちに事件の裡面の真相を穿《うが》たんと試みたるが如きは、真に驚くべき事実にして、仮令《たとい》同婦人が如何に慧敏《けいびん》、且つ果敢なる判断力を有するものと見るも、尚且つ、不自然の感を免れず。但し、同婦人が常に、何等かの痛切なる事情に迫られて、かかる問題を念頭にかけおり、此《かく》の如き事実に関する風説又は説明等に就て、鋭き注意を傾注しおりたるものとすれば、かかる際、かかる質問を発するは強《あなが》ちに不自然と云い得べから
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