夢中遊行中に行いし犯罪に対する責任は、夢遊病者本人が負うべき場合甚だ些《すく》なく、これを遺伝せしめたる祖先及びその時代の社会等が、負うべき場合多き事を、この事件に対する法律的考察の参考として附記しおくべし。
【十】 呉家の血統に関する謎語
劈頭《へきとう》に掲げし四項の談話中、右に摘出したる以外にも亦《また》、呉一郎の心理に、かかる夢中遊行を発作し得べき遺伝的の或るもの[#「或るもの」に傍点]が存在せる事を暗示せる個所|尠《すくな》からざるが如し。即ち左の如し。
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=呉一郎の談話中= 同人母千世子は、女性にしては珍らしき明晰なる頭脳を有し、且つ、気強き性格の持ち主なる事が説明されおり、且つ、迷信家に非《あら》ざる旨を弁護しあるにも拘らず、母子二人の宿命、もしくは運命に関しては、極めて平凡、且つ愚昧に属する迷信を極度に固執しおれる事実より推して、同女の心理に何等か不可抗的の憂悶不安の、不断に存在せるに非ざるなきやを疑い得る事。
=同= 狸穴の先生[#「狸穴の先生」に傍点]と呼ばるる占断者《うらないしゃ》の言に「お前達は、何者かに咀《のろ》われている」とあ
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