なる事を認めたるのみにて直ちにこれを嚥《の》み下すことは、あり得べき道理なり。夢中遊行中に、油、又は下水溝の汚水の如きものを口にして自らこれを知らず、翌朝に到りて異状の口臭を感じ、又は嚥下物《えんかぶつ》の不消化等に依る頭痛、嘔気等を訴えて家人に怪しまれ、仏壇、又は行燈《あんどん》の油の減少せる等の事実と、想像とが結び付けられたる結果、当該本人の首のみが脱出したるが如き疑いを受くることは、人智未開の往昔に於て、当然あり得べき事なりと考えらる。尚《なお》、このロクロ首、即ち夢中遊行の主人公が、平生あらゆる本能的自我的心理の発動を抑圧し、又は抑圧され勝《がち》なる妙齢の美人と人間の祖先たる下等動物中STEGOCEPHALIAを象徴したる三ツ眼の怪物との二種類によって代表されおり、且つ、長き舌を出して液体を舐むる[#「長き舌を出して液体を舐むる」に傍点]という動物的の挙動が、これに結び付けられおる諸点は心理遺伝学中、動物心理の遺伝発露に就て研究すべき好参考材料なれども、ここには煩《はん》を避けて冗説せざるべし。以上述ぶるところによって見る時は、呉一郎の覚醒後の口臭は、吸入、又は注射に用いられ
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