、普通の自殺者の遺書等の中に発見さるる夢の如き「自己歎美」又は、甘美なる涙を含む「自己陶酔」の心理の裏面にはこの種の変態心理の多少を認め得ざる事なく、殊に失恋自殺者の心理にして、この種の変態的欲求に最後の、且つ、唯一最高の満足を求めおらざるもの一人も無しと断言するも敢《あえ》て過言に非《あら》ず。その他、この種の心理の発露の特異なるものに到っては、自己の名前、肖像等の抹殺破棄……鏡面の理由なき破壊……模擬戦、又は劇等に於ける傷者、死者等の役廻り志願……各種の芸術作品中、自己に擬《ぎ》せる人物に対する作者の残忍なる描写……等の軽度なるものより、遺書なき自殺……他人もしくは公衆の面前に於ける自殺……自己及び環境を美化粉飾したる自殺……同情の情死……同性同胞の情死……自殺|倶楽部《クラブ》の存在……等、その欲求の変幻、その発露の怪奇、殆ど端倪《たんげい》すべからざるものあり。その他、人類生活の日常到るところの起臥《きが》談笑の間に於ても、本来自然の自己愛着心と不即不離の関係を保ちつつ、知不知、不言不語の裡《うち》にこの種の変態心理が流露反映しつつあるものなるを以て一々枚挙に遑《いとま》あらず
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