べく、目下材料の整理中に属すれども、その一班を摘要すれば、元来この屍神、屍鬼、もしくは火車等と称する妖異現象は、狐猫《こびょう》の類族、又は鴉《からす》、梟《ふくろう》等の怪禽妖獣の族の所業なるが如く信ぜられおる傾向あり。然れども事実は左《さ》に非《あら》ず。すなわちそれ等の伝説記録等に拠って、屍体飜弄の状況を按見《あんけん》するに、まず劈頭《へきとう》に、棺柩《かんきゅう》中、もしくは床上に静臥安居しおりたる屍体が忽然《こつぜん》として立上り、虚空を走るという形容あり。続いて眼を閉じ、毛髪と両手とを力無く垂下したる亡者が、或は逆立《さかだち》し、或は飜筋斗返《とんぼがえ》りし、斜立《しゃりつ》したるまま静止し、又は行歩《こうほ》し、丸太転び、尺蠖歩《しゃくとりあゆ》み、宙釣り、逆釣《さかづ》り、錐揉《きりも》み、文廻《ぶんまわ》し廻転、逆反《さかぞ》り、仏倒《ほとけだお》し、うしろ返り、又は跳ね上り、飜落《ほんらく》するなぞ、恰《あたか》も何者かが手を加えて操縦せるが如くなる、あらゆる奇抜なる形状と運動とを描き現わすものとなせるが、尚よく冷静、仔細にこの形容を観察する時は、此《かく》
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