いぼう》が落ちたる事実は、本人が夢中遊行中の無意識的理智の発動に依って行いたる犯罪の隠蔽手段に非ざるなき乎《か》。兇行その他の不正行為を敢てする事多き夢中遊行者が、かかる行為を併せ行う例は、甚だ珍らしからず。しかも、その大部分は、この事例に於けるが如く、常に笑うべき浅薄なる手段なるに照しても、這般《しゃはん》の疑問が不自然に非ざるを知り得べし。又、或《あるい》は、外より何者かが入り来らむとしたる際、誤って支棒を落し、様子を覗いおるうち、呉一郎が降り来りたるを以て逃亡したる等の、偶然の事跡の暗合せるものに非ずやとも考え得べし。然れども這般の疑点に就《つ》[#ルビの「つ」は底本では「つい」]いては調査が欠如しおるが如くなるを以て姑《しばら》く疑問として保留しおくべし。

  【四】 夢遊状態発作当初の行動……絞殺……

 この事件の根本的説明となるべき兇行の目的が、今日に到るまで茫乎《ぼうこ》として、推理の範囲外にある事実と同時に「つくし女塾内には呉一郎|母子《おやこ》と、女塾生に関する以外の事跡を認めず」云々というW氏の調査諸項を併せ考うる時は、この事件の真相が呉一郎のその母に対する夢中
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