点]、覚醒時に於て不意に大音響に打たれたる心理の急変化とが酷似[#「覚醒時に於て不意に大音響に打たれたる心理の急変化とが酷似」に傍点]せるがために、逆に錯覚されて一ツの音響と感ぜられたるものなる事を知るを得べし。
更に右の事例に照して、この事件を考察する時は、呉一郎の第一回の覚醒なるものは、その直前に於て、同人の心理に高潮充満しおりたる、性的の衝動に依って描かれつつありし或る種の夢の進行が、これに依って刺戟喚起されたる良心的の衝動を象徴する或る幻像の出現と不可抗的に交叉衝突したる刹那の恐怖的心理状態が、音響的の錯覚を与えたるものに非ずやとも考えらる。而《しか》して、この仮定を認むる時は、その性的衝動の危機の裡《うち》に眼覚めたる呉一郎が、その母の寝顔を見て、異常の美を感じたりという事実は、極めて自然なる心理の帰趨《きすう》にして、特に、春季に於ける年少の童貞に有り勝ちの秘密的、心的経験に関する、純潔、偽らざる告白というを得べく、同時にその後の熟睡中に於て、同じ衝動によって刺戟誘発されたる夢中遊行の存在し得べき可能性は、一層、底強く裏書きせられ得るものと云うべし。
尚又、支棒《つっか
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