実はこの抜萃記録は吾輩の「心理遺伝論」の中に挿入しようと思っていたものであるが、そんな論文の原稿は最前すっかり焼棄てたけれども、特にこの一部だけは残しておいたものだ。諸君は今迄吾輩が説明したところによって、現在|天晴《あっぱ》れの精神科学者を兼ねた名探偵となって御座るわけだから、その力でこの記録を読んで行かれたならば、徹底的にこの事件の真相を看破して、ギャフンとまいる位の事は、何の雑作もあるまいと思う。
……この事件は如何なる心理遺伝の爆発に依《よっ》て生じたものか? その心理遺伝を故意に爆発させた者が居るか居ないか。又、居るとすればどこに居るか。そうしてこの事件に対する若林と吾輩の態度はこの事件の解決に対して、如何なる暗示を投げかけているか……という風にね。併し、よっぽど緊《しっか》りと褌《ふんどし》を締めてかからないと駄目だよ……なぞと脅かしておいて、その間に吾輩は悠々とスコッチを呷《あお》り、ハバナを燻《くゆら》そうという寸法だ……ハハン…………。
◆心理遺伝論附録◆[#「◆心理遺伝論附録◆」は本文より3段階大きな文字]…………各種実例[#「…………各種実例」は本文より1
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