要らず」どころではない。「スクリーン要らず」の「映写機要らず」の「フィルム要らず」の……これを要するに「何も彼《か》も要らずの映画」と云っても差支ないという……とても独逸《ドイツ》製の無字幕映画なぞいう時代遅れな代物《しろもの》が追付く話ではない。……というのはどんなシロモノかと云うと、種を明かせば何でもない。すなわち今の若林君が、吾輩に引渡して、吾輩が空《から》ストーブの中に抛《ほう》り込んでおいた一件の調査書を、吾輩が後から読んで要点だけを抜書きにして、自分一個の意見を書き加えた所謂《いわゆる》抜萃の各|頁《ページ》を、一枚|毎《ごと》に順序を逐《お》うて、映画として御覧に入れるのだ……というと又、ドエライ手数がかかるようだが、実は何でもない。ただ、その抜萃の原本を、この遺言書のココントコへ挿入しておくだけの手数で……エヘン……諸君もただ、それを読むだけで訳がわかるという……吾輩最近の発明にかかるトリック映画だ。今にこの式の映画が大流行を来《きた》すと思うから、何ならパテントをお譲りしても宜敷《よろし》い。御賛成の諸君がありましたら……ハイ只今……一寸《ちょっと》お待ち下さい。
 
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