失っておりますような訳で……」
「アハハハハハ痛快痛快……。そう来なくっちゃ面白くない。君の腕試しには持って来いの事件らしいね」
「イヤどうも……腕試しどころでは御座いませんので……。実は私もこの事件を、兼《か》ねてから御指導によって研究致しております精神科学的犯罪[#「精神科学的犯罪」に傍点]の好研究材料と信じまして、一ツの事を三ツも四ツもの各方面から調査致しまして、スッカリ書類にしておいたので御座いますが……この風呂敷包みの中のがそれで……」
「……ウワッ……オッソロシイ大部なモンじゃないかそれあ……事件が始まってから、まだ一週間しか経たないのによく、それだけの書類が……」
「イヤ、この中には、二年前の事件に関する調査書類も一緒になっておりますので……又今度の事件の分も、いつ何時《なんどき》私が重態に陥りましても差支えないように、調べる片端《かたっぱし》から不眠不休でノートに致して参りましたのですが……おかげで持病の喘息《ぜんそく》が急に悪化しまして、幾何《いくばく》もない私の余命が、一層たよりなくなったような気が致します」
「ウ――ム。そういえば近来急に影が薄くなったようだ。気を
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