つけなくちゃいけないぜ。木乃伊《ミイラ》取が木乃伊式に、自分自身が精神科学の幽霊になったんじゃ鳧《けり》のつけようがないからね。アハハハハ、イヤ御苦労御苦労……ところで、その包の上にツン張り返っている四角い箱は何だいソレア……」
「ハイ。これが今回の心理遺伝事件の暗示に使われました一巻の絵巻物で、箱は私が指物屋《さしものや》に命じて作らせたもので御座います。……その呉一郎と申す青年は、誰かにこの絵巻物を見せられた結果、精神異常を来《きた》したものに相違ないと考えられるので御座いますが、今も申します通り、当局者と私の見込が全く違ってしまいまして、呉一郎の精神異状は自然的の発病か、もしくは精神病者を装っているものと認められておりますために、この絵巻物を当局者に参考材料として見せましても、頭から一笑に附しているので御座います。併し又、一方から申しますと、そのお蔭で、斯様《かよう》な貴重な参考材料が、都合よくこちらの手に這入りましたような訳で……」
「アハハハハ。そいつはよかったね。君がその風采で、警察や裁判所の奴等の前にそんな巻物を持出して、ソモソモこれが恐れ多くも勿体《もったい》なくも正木
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