睡りこけております。
ところへ、青いメリンスの風呂敷を一個、大切そうに抱えた若林博士が、長大なフロック姿を音もなく運んで這入って来まして、正木博士と向い合った小さな回転椅子に腰をかけました。矮小な正木博士が、大きな椅子の中一パイにハダカッているのに対して、巨大《おおき》な若林博士が、小さな椅子の中に恭しく畏《かしこま》っている光景は、いよいよ絶好の漫画材料で御座います。……と、やがて若林博士は例によって持病の咳に引っかかりまして、白いハンカチを口に当てたまま、ゴホンゴホンと苦しみ始めました。
正木博士はその騒ぎでやっと眼を醒ましたものと見えまして、新聞と葉巻を空中にヤーッとさし上げて、眼の前の若林博士は勿論のこと、この室も、九州大学も、しまいには自分自身までも一呑みにしてしまいそうな、素敵もない大|欠伸《あくび》を一つしました。
斯《か》くして事件勃発以後に於ける二人の博士の最初の会見は、この大欠伸によって皮切られたのでありますが、続いて始まる二人の会話が、表面から見ますと何等の隔意もないように思われまするにも拘らず、その裏面には何かしら互いに痛烈な皮肉を含ませて、出来るだけ深刻
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