おき》な肘掛回転椅子に乗っかった正木博士は、白い診察服の右手の指に葉巻の消えたのを挟み、左には当日の新聞紙を掴みながら鼻眼鏡をかけたままコクリコクリと居睡りをしております。トント外国の漫画に出てまいります屁《へ》っぽこドクトルそのままで……読みさしの新聞の裏面に「花嫁殺し迷宮に入る」という標題が、初号三段抜きで掲げてありますところを特に大うつしにして御覧に入れておきます。そのうちに大暖炉の上の電気時計の針が、カチリと音を立てて三時三分を指しますと、大学のお仕着せを着た四十恰好の頭を分けた小使が、一葉の名刺を持って這入って来て、恭《うやうや》しく正木博士の前に捧げました。
扉の閉《しま》った音で眼を醒ました正木博士は、その名刺を受取ってチョット見ますと如何にも不機嫌らしく両眼を凹《へこ》ませました。
「ナアーンだ。何遍云って聞かせてもわからない唐変木《とうへんぼく》だ。馬鹿叮嚀にも程がある。これから、こんなものを一々持って来なくとも、黙って勝手に這入って来いと、そう云え」
と云いながら、その名刺を大卓子の上に投げ出しました。ナカナカ威張ったもので……そのまま眼を閉じて、又もウトウトと
前へ
次へ
全939ページ中453ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング