《かみのけ》を額に粘り付かせたまま、コメカミをヒクヒクと波打たせつつ、黒装束の中から見下している……。
彼はこうして暫くの間、動きませんでした。何を考えているのか……何をしようとしているのか解らないまま……。
……と見る中《うち》に突然に、彼の右の眼の下が、深い皺を刻んで痙攣《ひっつ》り始めました……と思う間もなく顔面全体に、その痙攣《けいれん》の波動がヒクヒクと拡大して行きました。泣いているのか、笑っているのか判然《わか》らないまま……洋紙のように蒼褪《あおざ》めた顔色の中で、左右の赤い眼が代る代る開いたり閉じたりし初めました。何事かを喜ぶように……緋色に乾いた唇が狼のようにガックリと開いて、白茶気た舌がその中からダラリと垂れました。何者かを嘲《あざ》けるように……それは平生の謹厳な、紳士的な若林博士を知っている者が、夢にだも想像し得ないであろう別人の顔……否……彼がタッタ一人で居る時に限って現われる悪魔の形相……。
けれどもその中《うち》に彼はソロソロと顔を上げて参りました。いつの間にか乾いている額の乱髪を、両手で押上げつつ、青白い瞳をあげて、頭の上に輝く四個の電球を睨み詰ま
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