九大医学部長の職権を利用しつつ、念を入れ過ぎる位に念を入れて仕上げた仕事ですから誰が疑点を挿《はさ》み得ましょう。どこに手ぬかりがありましょう……九大、屍体冷蔵室の屍体紛失事件が、若林博士以外にはタッタ一人しか居ない係りの医員に、不審の頭を傾けさしたまま、永久の闇から闇に葬られて行く時分には、行衛不明になった少女の虐殺屍体は既に、一片の白骨となって、立派な墓の下に葬られて、香華《こうげ》を手向《たむ》けられている訳であります。
同時に現在、気息を恢復しつつある解剖台上の少女……呉モヨ子と名付くる美少女は、戸籍面から抹殺された、生きた亡者となって、あの蒼白長大な若林博士の手中に握り込まれつつ、呼吸する事になるので御座いますが、しかし、それが後《のち》になって何の役に立つのか、若林博士は何の目的でこの少女を、生きた亡者にして終《しま》ったのか。……その説明は後《のち》のお楽しみ……と申上げたいのですが、実はこの時までは天井裏から覗いておりました正木博士にもサッパリ見当が附《つい》ておりませんでしたので……恐らく諸君とても御同様であろうと思います……が……。
……しかし同時に、新聞紙上で
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