うちに遺骨を受取りに来るように通知が出されるのでありますが、実は、解剖が済みますと直ぐに、裏手の松原に在る当大学専用の火葬場の人夫が受取って行って、立会人も何も無いままに荼毘《だび》に附して、灰のようになった骨と、保存してあった遺髪だけを受取りに来た者に引渡す……という、一般の火葬の場合とは全然違った、信用一点張りの制度になっておりますので、屍体の替玉に気付かれる心配は万に一つもないといってよろしい。尤《もっと》も、その火葬以前にやって来て、今一度、死人の顔を見せてくれと要求するような、取乱した親達がないという断言は出来ないのでありますが、仮令《たとい》そのような場合があるにしても、彼《か》のメチャメチャに縫い潰した顔を見せたら、二《ふ》タ目と見得る肉親の者はまずありますまい。
但、唯一つここに懸念されるのは、その筋の係官や、関係医師なぞが、今一度、念のために検分に来る場合でありますが、これ程に二重三重の念を入れて、巧妙、精緻な手を入れた換玉《かえだま》である事を、どうして見破り得ましょう。いずれに致しましてもその人格に於て、又はその名声に於て、天下に嘖々《さくさく》たる若林博士が、
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