てしまいました。
それから別の皿へ墨汁を溶かして、色々の墨色を作りながら、破った頁《ページ》文字とソックリの筆跡で十数個の屍体に関する名前、年月日、番号等を書入れて参りました……が……その中でも今の「四百十四号……七」に関する書込みは全部飛ばして、次の「四百二十三号……四」の分を記入して、一々「若林」という認印《みとめいん》を捺《お》してしまいました。……すなわち、今しがた寝棺の中に納められたばかりの少女の変装屍体に関する記入は、かくしてこの屍体台帳から完全に追出されてしまった訳で御座います。
……諸君はここに於てか、今迄の若林博士の苦心惨憺の怪所業の一々が、何を意味しておったか……という事を、悉《ことごと》く明白に理解されたで御座いましょう。
美少女、呉モヨ子の身代りとなって、棺の中に納められておりますのは、もともと身よりたよりの無い、行衛《ゆくえ》も知らぬ少女の虐殺屍体で、こちらから通知を出さない限り、遺骨を受取りに来る気づかいのない種類のものである事が、容易に察せられるのであります。
一方に当大学内に於て、屍体解剖を行われました人間の身寄《みより》の者は、大抵、その翌日の
前へ
次へ
全939ページ中444ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング