しかも今度こそは、その黒怪手腕中の黒怪手腕を現わすホントの怪事業とでも申しましょうか。
ここで寝棺と解剖台との間に突立って、又もホッとばかり肩を戦《おのの》かして一息しました黒衣の巨人はやがて又大急ぎで手袋を脱ぎ棄てますと、まず鋏を取上げて、解剖台上の少女の長やかに房々とした頭髪を掻分《かきわ》けながら、まん中あたりの髪毛《かみのけ》を一抓《ひとつま》み程プッツリと切取りました。それを机の抽斗《ひきだし》から取出した半紙でクルクルと包みまして、同じ抽出《ひきだし》から出した屍体検案書の刷物《すりもの》や二三の文房具と一緒に先刻の屍体台帳の横に置並べましたが、やがて鉄製の円型腰掛を引寄せながら、新しい筆を取上げて墨汁を含ませますと、今の半紙の包みの上に恭《うやうや》しく「遺髪」「呉モヨ子殿」と書きました。それから、ちょっと時計を出して見ながらジッと考えている様子でしたが、屍体検案書の書込みの方は後廻しにする決心をしたらしくソッと横の方へ押遣《おしや》って、屍体台帳の方を繰拡げますと、その中央に近い処にある「四百十四号……七」と書いた一枚をほかの書込みの行列と一緒に叮嚀に破って、抜取っ
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