致しましてもあのように青黒い、又は茶色に変色した虐待致死の瘢痕《はんこん》を砥《といし》の粉で蔽《おお》うて、皮膚の皺や、繃帯の痕《あと》を押し伸ばし押し伸ばしお白粉《しろい》を施して行く手際なぞは、実に驚くべきもので、多分遊廓の遣手婆《やりてばば》が、娼妓の病毒を隠蔽する手段なぞから学んだもので御座いましょうか……とうとう色の黒い、傷だらけの少女の肌を、色の白い少女の皮膚の色と変らない程度にまで綺麗に塗上げてしまいました。それから口紅、頬紅、黛《まゆずみ》、粉白粉なぞを代る代る取上げて、身体各部の極く細かい色の変化を似せて、大小の黒子《ほくろ》までを一つ残らずモデルの通りに染め付けた上に、全身の局部局部の毛を床の上の少女と比較しつつ、理髪師も及ばぬくらい巧みに染め上げて、一々香油を施しました。
……と思うと今度は、手近い机の抽斗《ひきだし》を開いて赤、青、紫、その他の検鏡用のアニリン染料を、梅鉢型のパレットに取って、新しい筆でチョイチョイチョイと配合しながら、首のまわりの絞殺の斑痕を、実物と対照して寸分違わぬ色と形に染付け始めましたが、これとても実に巧妙、精緻を極めたもので、浮上っ
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