屍体が一個出来上ってしまいました。
黒衣の博士はここでヤット一息入れますと、解剖台の上と下とに横たわる二人の少女の肉体を繰返し繰返し見較べておりましたが、そのうちに、二重の手袋を左右とも脱ぎ棄てまして、傍《かたわら》の机の上に在る固練白粉《かたねりおしろい》を掌《てのひら》で溶きながら、一滴も澪《こぼ》さないように注意しいしい、四一四号の少女の顔、両肩、両腕と、腰から下の全部にお化粧を施し初めました。
……ところでその手附を御覧下さい。いかがです。粗《あら》い縫目や、又は毛髪の生際《はえぎわ》なぞに白粉が停滞しないように注意しつつ、デリケートに指を働らかせて行くところは、如何にも斯様な化粧品を扱い慣れている手附では御座いませんか。
これは恐らくこの博士が、自身に何回となく変相をした経験があるせいでは御座いますまいか。それともこの博士の裏面的性格から来た、飽く事を知らぬ変態的趣味と、法医学的研究趣味とが相俟《あいま》って、伝え聞く数千年前の「木乃伊《ミイラ》の化粧」式な怪奇趣味にまで、ズット以前《まえ》から高潮しておりましたのが、斯様な機会に曝露したもので御座いましょうか。いずれに
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