待、もしくは迫害が、如何に激烈であったかを証明しているのでありますが、しかし若林博士は相も変らず、そんな事には眼もくれませぬ。ただ、それ等の内臓の一つ一つを手当り次第に廻転さしたり、掻き乱したりしただけで、その最後に胃袋と、大小腸と、膀胱《ぼうこう》とを、ほんの形式だけ截り破るなぞ、あらゆる検査の真似型だけを終りますと、普通の解剖のように、各臓器の一部|宛《ずつ》を標本に取るような事もせずに、又も、太い針と麻糸を取り上げまして、下腹部から順次に咽頭部まで縫い上げて行きました……が……その間に於ける刀《メス》の揮《ふる》い方の思い切って残忍痛烈なこと……その針と、糸の使い方の驚くべき巧妙迅速を極めていること……そうしてその手付きや態度にあらわれて来る、たまらないほど辛辣な満足のわななき……それはこうした仕事によって、或る深刻痛烈な慾望を満足させつつある、精神異常者そのままの表現ではないかと疑われるくらい……。
 先刻から、かような一挙一動を、詳しく見ておいでになりました諸君は、もはやハッキリとお気付きになっているで御座いましょう。今や若林博士の態度は、その平生の冷静、荘重な物腰を全然|喪
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