ロクに検査もせずに、もとの処に当てがいまして、太い針でブスブスと縫い合せてしまいました。その一気呵成《いっきかせい》的なゾンザイサというものは、やはり前とおんなじ事なので……。
 次に若林博士は今一度、屍体をあお向けにして、汚れた処をザッと洗い浄めてから、腹部の皮の厚さを押えこころみている……と思ううちに、新しいメスをキラリと取上げて、咽頭《いんとう》の処をブスリと一突き……乳の間から鳩尾《みぞおち》腹部へと截り進んで、臍《へそ》の処を左へ半廻転……恥骨《ちこつ》の処まで一息に截り下げて参りますと、まず胸の軟骨を離して胸骨を取除《とりの》け、両手を敏活に働らかせつつ、胸壁から下へ腹壁まで開いて参りましたが、只一刀で腹壁、腹膜が同時に、切開かれておりまして、内臓には一点の疵《きず》も附いていない。……五臓六腑の配置が歴々整然として、蒼白い光りに輝き濡れている光景は、気味悪いと申しましょうか、物凄いと形容致しましょうか……その肺臓の一面にあらわれている黒い汚染《しみ》は、この少女が炭坑労働に従事しておった事をあらわし、その致死の直接原因と見られる肝臓の破裂と内出血は、この少女に加えられた虐
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