ら現われた脳髄を、器用な手附で鋏を使いながら硝子《ガラス》の皿の上に取出しますと、そこで同博士一流の念入りな調査をこころみるか、それとも標本にして取っておくのか……と思われましたが、これが又案に相違して、まるでビフテキかオムレツでも取扱うような無関心さで、皿の中の脳髄をクルリと宙返りさせますと、そのまま旧《もと》の空洞に納めまして、頭蓋骨を冠せて、皮と髪毛をクルリと蔽《おお》うて、針と糸を迅速に捌《さば》き働かせつつ、粗《あら》っぽく縫い合せてしまいました。
 ……これは意外である。一種の狼藉《ろうぜき》とも見るべき所業である。厳格方正を以て聞えた若林博士は、何故《なにゆえ》に今夜に限って、斯様《かよう》な不誠意を極めた屍体解剖を試みるのであろうか……と疑いの眼を瞠《みは》っているうちに、屍体は間もなく……ゴロリと俯向けに引っくり返されました……と見ると、疵《きず》だらけの背筋の中央、脊椎の左右の筋肉が円刃刀《メス》でもってゴリゴリと切り開かれました。そこから二股《ふたまた》の鋸を突込んで、左右の肋骨《ろっこつ》を切り除《の》けた若林博士は、取出した背骨を縦に真二つに切り開いただけで、
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