かたはし》から、取除いて行きましたが……御覧なさい……その蒼黒い少女の皮膚の背中から胸へ、胸から股へと、縦横にタタキ付けられている大小長短色々の疵痕《きずあと》を……殴打、烙傷《らくしょう》、擦傷《さっしょう》の痕跡を……それらの褐色、黒色、暗紫色の直線、曲線は腰部にあらわれている著明な死斑と共に、煌々《こうこう》たる白光下に照し出されると同時に、そのままの色と形の蛇や、蜥蜴《とかげ》や、蟇《がま》となって、今にも彼女の皮肌の上を匐《は》いまわり初めるかと疑われるくらい……。
御承知の御方も御座いましょうが、全国の各大学や、専門学校の研究用の解剖屍体には、こうした種類の屍体がよく持込まれるので御座います。殊に、この九大に収容されるのは、同地方に多い炭鉱や紡績、その他の工場、又は魔窟なぞへ誘拐虐待されたもの、又は自殺者、行路病者なぞの各種類に亘っておりまして、中には引取人のないのも珍しくありませぬが、九大側では、そんなのを片《かた》っ端《ぱし》から研究材料にして切り散らしたあげく、大学附属の火葬場で焼いて骨《こつ》にして、五円の香典を添えて遺族に引渡す。又、引取人のないものは共同墓地へ
前へ
次へ
全939ページ中431ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング