ずその奇怪な少女の仮死体を、こうしてタッタ一人で極秘密裡にいじくりまわしているというのは、如何なる理由と目的があっての事で御座いましょうか。尋ねるよすがもありませぬが、何に致せ一代の名法医学者、若林鏡太郎氏の事で御座いますから、古今東西に於ける仮死の例証を、既に充分に研究し尽しているので御座いましょう。そうしてこの少女の屍体が、仮死体であるという事実を、単に自分一個限りの絶対秘密にしておくという事が、この空前の怪事件の解決のために必要、止むを得ないであろう何等かの重大な理由を、彼自身に確認しているからの事で御座いましょう。
 そればかりでは御座いませぬ。……その若林博士が扮装しました、この黒怪人物は、先刻から闇黒《くらやみ》の中に潜んでおりました際に、彼《か》の寝棺の蓋をソッと開きまして、この少女を仮死状態から覚醒せしむべく、同博士独特の何等かの刺戟手段を施しつつ、時々ステトスコープでもって少女の心音を窺っていた事が、疑いなく察せられるのであります。……というのはツイ今しがた、その若林博士の黒怪人物が、十一時の時計の音を聞いて電燈を点《つ》けます前に、何やらパタリと音を立てましたのは、
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