箱に納められる以前から、死んではいなかったに違いないという事が考えられるのであります。頸部《くび》の周囲《まわり》には歴然たる索溝《ストラングマルク》――絞殺の痕跡を止めたまま……。
……何という不可思議な出来事で御座いましょうか……。
しかし若林博士は格別、驚いた様子も見せませぬ。間もなくステトスコープを耳から離して、時計と一緒にチョッキのポケットに突込みましたが、如何にも満足そうに二ツ三ツ大きくうなずきながら、改めて少女の姿を見下しているので御座います。
こうした態度から察しますると若林博士は、一番最初に、この少女の屍体を検案致しました時から、この少女が医学上、稀有とされている仮死状態に陥ったものである事を、早くも看破していたものと見えます。勿論それは、その以前に馳付けたであろう附近の医師や、警察医が、充分に診察を遂げた後《のち》の事でなければなりませぬが、それにも拘わらず、仮死である事を確認致しましたのは、如何なる点に着眼したもので御座いましょうか。しかも、その上に、その仮死体を、如何なる名目の下に斯様《かよう》な棺桶に詰《つめ》て、この部屋へ運び込ませたものか……のみなら
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