合には、現今のゴム管式のものよりもこちらの方が有利なので御座います。若林博士は、その喇叭型の小さい方の一端を、少女の屍体の左の乳房の下に当てがいまして、他の一端を覆面の下から、自分の耳に押当てて、一心に聴神経を集中しているようで御座います。
 屍体の心音を聴く。……おお……何という奇怪な若林博士の所業で御座いましょう。見ている者の胸の方が、却《かえ》ってオドロオドロしくなりますくらいで……。
 ……けれども御覧なさい。若林博士は依然として旧式聴診器《ステトスコープ》に耳朶《みみたぶ》を押当てたまま、片手で解剖着の下から、銀色の大きな懐中時計を取り出して、一心に凝視しております……確かに心臓の鼓動音が聞えているので御座います。すなわち、この解剖台上の少女の肉体は、まだ生きているに違いないのであります。……そういえば最前、若林博士がこの少女の全身を検査した時に、死後相当の時間を経過した屍体の特徴として、どこかに、是非とも現われていなければならぬ薄青い死斑が、どこにも影を見せなかった……又、強直した模様もなかったところを見ますると、多分、この少女はあの寝棺に納まっているうちから……否。あの棺
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