え直して、そこに博士独特の透徹、鋭利なる観察の焦点を発見すべく、苦心惨憺しているので御座いましょうか……それともこの屍体が、この教室に於て未《いま》だ曾《かつ》て発見された事のない程に、無残な美くしさと、深刻なあでやかさ[#「あでやかさ」に傍点]とをあらわしておりますために、生涯を学術のために捧げている独身の同博士も、思わず凝然、恍惚として、何等かの感慨無量に及んでいるので御座いましょうか……否々。そのような想像は、厳正周密なる同博士の平生の人格に対して、敬意を失する所以《ゆえん》で御座いますから、これ以上に深く立入らぬ事に致します。
 ……と……やがて突然、吾《われ》に帰ったようにハッとして、誰も居ない筈の部屋の中をグルリと見廻しました若林博士は、黒装束の右のポケットに手を突込んで、何やら探し索《もと》めているようで御座いましたが、そのうちにフト又、思い出したように寝棺の箱に近付いて、美しく堆積した着物の下から、子供の玩具ほどの大きさをした黒い、喇叭《らっぱ》型の筒を一本取り出しました。これはこの節の医者は余り用いませぬ旧式の聴診器で、人体内の極く微細な音響まで聴き取ろうと致します場
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