くは牢獄の模型とも見える円筒型の塔の無数の窓から、糸のような水蒸気がシミジミと洩れ出している光景は、何かしらこの世ならぬ場面を聯想させるに充分で御座います。それから今一つ……初めの中《うち》はチョットお気が付きかねるかも知れませぬが、やがて何となく異様に眼に映って来るであろうと思われまする品物は、右手の窓の下に、壁に接して横たえられております長方型の大きな箱で御座います。その上に白い布が蔽《おお》われているところを見ますと、いか様これは死人を納めた寝棺に相違御座いますまい。……もっとも死体解剖室に寝棺といえば、必然過ぎるくらい必然的な取り合わせでは御座いますが、それが何となく異様に眼を惹きますのは、その上に掛かっております白い蔽いが、高価な絹地らしい、上品な光りを放っているせいでも御座いましょうか……。これは余談かも知れませぬが、このような立派な寝棺が、法医の解剖室に運び込まれるような事は、まずないと申しても宜しい位で、大抵の場合、松か何かの薄い荒板製に、白墨《チョーク》で番号を書き放した程度のものが多いのですが……。
 そうした解剖台と、湯沸器《シンメルブッシュ》と、白い寝棺と、三通
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