、何という醜体《しゅうたい》であろう……と諸君は定めし不審に思われるで御座いましょうが、この説明は後《のち》になってから自然とおわかりになる事と存じますから、ここには略さして頂きます。
……時は大正十五年四月二十六日の午後十時前後……呉一郎の心理遺伝を中心とする怪事件が勃発致しましてから約二十時間後の光景……フィルムは依然として真黒なまま、秘やかに辷《すべ》っております。五百尺……八百尺……一千尺……一千五百尺……画面の静けさと闇黒さとは以前の通りで、ただあの汚物の燐光が、次第に青白く、明瞭の度を加えて来るばかりであります。折りしもあれ、この教室を包む一棟の中《うち》の、遥かに遠くの小使室で打ち出す時計の音が、陰《いん》に籠《こも》って……一ツ……二ツ……三ツ……ボ――ン……ボ――ン……ボ――ン……ボ――ン……ボ――ンボ――ンボ――ンボ――ン…………ボオ――オオ――ンン……。
……十一時を打ち終りますと同時に、眼の前の闇黒の中で、何かしら分厚い、大きな木の箱を閉したような音がバッタリと致しますと、間もなくパアッと大光明がさして、眼も眩《くら》むほどギラギラと輝やくものが、そこいら中
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