精神科学の講義だ。諸君が日常フンダンに経験している恐ろしい精神生活の説明だ。
 しかし諸君。まだ驚いては早過ぎるよ。精神科学の原理原則は、もっともっと恐ろしい、驚目、駭心《がいしん》に価《あたい》する事実を提供しているんだよ。
 今まで説明して来たところによって既に、アラカタ理解されているであろう。人間の代が変るのは、吾々が眠って又、醒めるようなものである。一夜眠ったら昨日《きのう》の事なぞ、キレイに忘れていそうなものだが、サテ起き上ってみると、殆ど無意識に、大工は昨日建てかけた家の続きを建てに行き、左官も同様に昨日の壁の続きを塗りに行く。そうすると又、昨日の事を思い出して……ハテ昨日、ここで十銭玉をオッコトシタが……とか、きのうの丁度今時分に、向うを別嬪《べっぴん》が通ったっけが……とかいうので、昨日のその時分に、そこでそうした通りに、キョロキョロしたり、ポカンとなったりする。
 精神の遺伝もその通り……親は昨日の自分で、子は明日《あした》の自分じゃ。夜は昨日の自分から、今日の自分が生まれて来る、暗い、無自覚のみごもり[#「みごもり」に傍点]の姿になる時間じゃ。
 されば男女を問わず
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