場面に読み入って、そうした光景を意識の中《うち》に描きながら、思わず涎《よだれ》を垂らす時のように、精神病者の病み疲れた反射交感機能の中では、そんな遺伝心理が、現実の気持ちや感じ以上に強烈、深刻に夢遊しあらわれている……と同時に、それ以外の意識は殆ど打ち消されてしまっているから、本人はシラ真剣になってその夢遊意識をその通りに実行する。だからそのする事、なす事が、一々先祖から伝わって来た気持の通りになって行くのだ。ソックリそのまま吾輩の学説とピッタリ一致して来る事になるのだ。
 今を去る事三千余年。ここを距《さ》る事三千里。
 天竺《てんじく》は仏陀迦耶《ぶっだがや》なる菩提樹《ぼだいじゅ》下に於て、過去、現在、未来、三世《さんぜ》の実相を明《あき》らめられて、無上正等正覚《むじょうしょうとうしょうがく》に入《い》らせられた大聖|釈迦牟尼仏《しゃかむにぶつ》様が「因果応報」と宣《のたも》うたのはここの事じゃ。親の因果が子に報《むく》いじゃア……エエカナア……。アハハハハハハハ。白骨の御|文章《もんしょう》ではない。投げ銭《ぜに》も放り銭も要《い》らぬ。現代科学の中《うち》でも最新、最鋭の
前へ 次へ
全939ページ中386ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング