人間は、自分の先祖が嘗《かつ》て、そんな気分、精神状態になった場面、品物、時候、天候なぞいう、所謂《いわゆる》、暗示[#「暗示」に傍点]にブツカルと、今の大工や左官と同様に、ありし昔の心理状態に立ち帰る……しかも、そんな風にして先祖代々から遺伝して来た心理は、一つや二つじゃないぞよ。又、そうした心理の暗示[#「暗示」に傍点]となるべき場面、品物、天候なぞいうものも、そこいら中にベタ一面に充満していて、夜となく、昼となく吾々の心理遺伝を刺戟し続けていて、眼の見える限り、耳の聞える限り、一刻一|刹那《せつな》も休んでいないのだから恐ろしいぞよ。吾々の一生を支配している「艮《うしとら》の金神《こんじん》」というのは、実にこの「心理遺伝」の原則であるぞよ。今にドエライ証拠を出すぞよ……。
アハハハハハ。大本《おおもと》教のお筆先と間違えてはいけない。吾々が日常に経験している極めて平凡な事実だ。吾々の気持が朝から晩までフンダンにクラリクラリと変化し、入れ換って行く……活動見に出かけるつもりが、途中でフイッと縁日の夜店に引っかかったり……旅支度で家を飛び出した奴が、図書館にモグリ込んだり……好《
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