や、又は壁に関係した言葉が、度々出て参ります。すなわちこの小男の母方の祖父は、黒田藩御用の左官職であった……お笑いになっては困ります。落語では御座いません……でありまして、その祖父の左官職人が、或る時、福岡城の天守|櫓《やぐら》の上で仕事を致しておりますうちに、過って足を辷《すべ》らして墜落惨死を致したので御座いますが、しかも、その祖父というのは元来、何事につけても身の軽いのが自慢だったそうで……天守台の屋根に漆喰《しっくい》のかけ直しをする時なぞは、殿様が遠眼鏡《とおめがね》で、その離れ業《わざ》を御上覧になった位だそうで御座います。そのほか平生の時にも足場を極めて簡略にして仕事をする癖がありましたために、出来上りは早う御座いましたが、何度も足がかりを誤ったり、途中に引っかかったりして生命《いのち》を喪《うしな》いかけましたのを、いつも奇蹟的に助かって来たので御座いました。
然るに、それが幾歳の時で御座いましたか、やはり天守の御屋根の絶頂に登って、殿様の遠眼鏡の中で働らいておりまする中《うち》に、ウッカリ殿様の方へお尻を向けました。すると、それを下から見上げておりました係りの役人が
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