まして、ゴロリと寝台の上に横になるところまで、五代前の儀十の生れ代りとしか思えませぬ。但し一度寝てしまいますと、疲労が甚しいせいか、あくる朝までブッ通しに白河夜舟《しらかわよふね》で、晩飯も何も喰いませぬ。おおかた夢の中で、曾々祖父の儀十になって、大身代でも作っているので御座いましょう。
……これが心理遺伝の第一例……御質問がありましたら御遠慮なくお手をお上げ下さい。
次に御紹介致しまするは最前から、赤煉瓦の壁に向って演説を致しております破れモーニングの小男で御座います。これは、あの空中で振り動かしております右の手附と、物を支え持ったような恰好にしている左の手と、それからあの、演説の中《うち》に使っている言葉が、有力な参考になるので御座います。
「……これは帝国の前途に横たわる一大障壁であります。今日の如く上塗《うわぬ》りの思想が横行し、糊塗縦横の政治が永続しているならば、吾々日本民族の団結は、あの切藁《すさ》を交えぬ土塀の如く、外来思想の風雨のために、遠からず土崩瓦解の運命に……」
いかがです。最前からお聞きの通り、この毬栗《いがぐり》のフロック先生の演説の中には、壁という文句
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