したならば、二十歳前後のういういしい若者であることが、おわかりになりましょう。久し振りに日陽《ひなた》に出て来ましたせいか、肌が女のように白く、ホンノリした紅い頬に、何かしらニコニコと微笑を含みながら、鍬を振り廻す白髪の老人の手許を一心に見守っております。その表情だけを見ますと、ちょっと普通人かと思われますが、なおよくお眼を止めて御覧下さい。その眼眸《まなざし》と、瞳の光りの清らかなこと……まるで深窓に育った姫君のように静かに澄み切って見えましょう。これは或る種類の精神病者が、正気に帰る前か、又は発作を起す少し前に、あらわしまする特徴で、正木博士が始終手にかけておられました、真狂《しんきょう》と、偽狂《ぎきょう》の鑑定の中でも特に鑑別し難い眼付なので御座います。
次には今の老人と青年の、遥か背後《うしろ》の方に跼《かが》まっている一人の少女にレンズを近付てみます。お見かけの通り、幽霊みたように青白く瘠せこけたソバカスだらけの顔で、赤茶気た髪を括《くく》り下げに致しておりますが、老人が作りました畠の縁《へり》に跼みまして、繊細《かぼそ》い手で色んなものを植え付ております。桐の落葉、松の
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