の通り九大の構内と構外とは一面に、一《ひ》と続きの松原の緑に埋められておりますが、その西端に二本並んだ大煙突の下《もと》に見えます見すぼらしい青ペンキ塗り、二階建の西洋館が、天下に有名なるキチガイ博士、正木先生の居《お》られる精神病学教室の本館で、そのすぐ南側に見えます二百坪ほどの四角い平地が、これから御紹介申上げます「狂人の解放治療場」で御座います。……撮影機と技師とを搭載致しました飛行機はだんだんと下降致しまして、精神病科本館階上、教授室の南側の窓の縁に着陸致します。……まるで蜻蛉《とんぼ》か蠅《はえ》なんぞのようで……時に大正十五年十月十九日……の午前正九時と致しておきましょうか。
この解放治療場を取巻いておりまする赤煉瓦の塀は、高さが一丈五尺。これに囲まれました四角い平地は全部この地方特有の真白い、石英質の砂で御座いますから、清浄この上もありませぬ。真中に桐の木が五本ほど、黄色い枯れ葉を一パイにつけて立っております。この桐の木はズット以前からここに立っておりまして、本館の中庭の風情となっておったもので御座いますが、この解放治療場開設のため周囲を地均《じなら》し致しまして以来、
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