御用だ。タッタ今お眼にかけよう……。
……サアサア入《い》らっしゃい入らっしゃい。世界中、どこを探しても見られぬ生きた魂の因果者の標本、日中の幽霊、真昼の化け物、ヒュ――ドロドロの科学実験はこれじゃこれじゃ……見料《けんりょう》は大人が十銭、小供なら半額、盲人《めくら》は無料《ただ》……アッ……そんなに押してはいけない。狂人《きちがい》連中に笑われますぞ。お静かにお静かに……。
……エヘン……。
ここに御紹介致しまするは、九州帝国大学、医学部、精神病科本館の裏手に当って、同科教授、正木先生が開設されましたる、狂人解放治療場の「天然色、浮出し、発声映画」と御座います。映写致しまする器械は、最近、九大、医学部に於きまして、眼科の田西博士と、耳鼻科の金壺《かなつぼ》教授とが、正木博士と協力致しまして、医学研究上の目的に使用すべく製作されましたもので、実に精巧無比……目下米国で研究中の発声映画なぞはトーキー及ばない……画面と実物とに寸分の相違もないところにお眼止《めと》めあらむ事を希望致します。
まず……開巻第一に九州帝国大学、医学部の全景をスクリーンに現わして御覧に入れます。
御覧
前へ
次へ
全939ページ中355ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング