て、やがて又、次第次第に回復して行く……その前後の移り変りをコクメイに研究して、記録して行かなければならないのだから大変である。ことに吾輩が研究の主題《テーマ》として選んだ材料を、今の学者の流儀で名付けると、遺伝性、殺人妄想狂、早発性痴呆、兼、変態性慾とも名付くべき、世にもややこしい代物《しろもの》と来ているんだから厄介この上もない。
 そんな実験の材料として選まれる人物はトテモ生やさしい御方ではない。ウッカリするとこっちがギューとやられるかも知れないのだから、吾輩は冒頭《のっけ》から生命《いのち》がけで、この実験に取りかかったものだが、とうとうその実験の煽《あお》りを喰って、自分自身が、自殺にまで追い詰められる事になって……イヤ。まだ自殺までには大分時間があるから、充分、十二分に落ち付いて、紫の煙と、琥珀《こはく》色の液体を相手に悠々と万年筆を揮《ふる》う事にする。
 諸君もユックリ読んでくれ給え。遺言とか何とかいったって気楽なもんだ。ナマンダ式やアーメン式、又は無念残念式とはネタが違う。キチガイ博士のキチガイ実験の余興みたいなもんだ。残る煙がお笑いの種明しだ。……吾輩の研究の中心と
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