っかく》自殺するのだから、何とか書いておかないと、アトで張合がないだろうと思って、お負《まけ》のつもりで書く訳だが、何を隠そう、その鬼籍に入った美少女とピンピン生きている美少年とが、現実に接吻、抱擁する事に依て、吾輩が畢生《ひっせい》の研究事業である精神科学の根本原理……即ち心理遺伝と名づくる研究発表の結論となるべき実験が、芽出度《めでた》し芽出度しになる手筈になっているのだ。
 どうだい。コンナ面白い、痛快な学術実験が、又とほかに在りますかい。アハハハ……。
 イヤ。恐らく無い筈だ。……というのは第一に、この実験の基礎となっている精神科学という学問が、吾輩独特の新規新発明に属するものなんだから……のみならずその中でも亦、吾輩専売の精神病学の実験というのが、普通の医学や何かのソレと違って、鳥や獣《けもの》や、人間の屍体なぞを相手に研究は出来ない。何故かというと鳥や獣は、或る種の精神病患者と同様、最初から動物性の丸出しで研究材料に不適当だし、死んだ人間には肝腎の実験材料になる魂が無い。必ずやピンピン溌溂たる人間の、正しい、健康な精神を材料に使わねばならぬ。そんな立派な精神が、突然に発狂し
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