るのである。
何の記憶もない筈の赤ん坊が、眠っているうちに突然に魘えて泣き出したり、又は何か思い出したようにニッコリ笑ったりするのは、母胎内で見残した「胎児の夢」の名残を見ているのである。生れながらの片輪《かたわ》であったり、精神の欠陥が在ったりするのに対しても、それぞれに相当の原因を説明する夢が、その胎生の時代に在った筈である。又は胎児の骨ばかりが母胎内に残っていたり、或は固まり合った毛髪と、歯だけしか残っていないような所謂《いわゆる》、鬼胎《きたい》なるものが、時々発見されるのは、その胎児の夢が、何かの原因で停頓するか、又は急劇に発展したために、やり切なくなって断絶した残骸でなければならぬ。[#地から1字上げ]――以上――
空前絶後の遺言書[#「空前絶後の遺言書」は本文より5段階大きな文字]
――大正十五年十月十九日夜[#「――大正十五年十月十九日夜」は本文より1段階大きな文字]
[#地から2字上げ]――キチガイ博士手記
ヤアヤア。遠からむ者は望遠鏡にて見当をつけい。近くむば寄って顕微鏡で覗いて見よ。吾《われ》こそは九州帝国大学精神病科教室に、キチガイ博
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