のである。
胎児の先祖代々に当る人間たちは、お互い同志の生存競争や、原人以来遺伝して来た残忍卑怯な獣畜心理、そのほか色々勝手な私利私慾を遂げたいために、直接、間接に他人を苦しめる大小様々の罪業を無量無辺に重ねて来ている。そんな血みどろの息苦しい記憶が一つ一つ胎児の現在の主観となって眼の前に再現されて来るのである。……主君を弑《しい》して城を乗取るところ……忠臣に詰腹《つめばら》を切らして酒の肴《さかな》に眺めているところ……奥方や若君を毒害して、自分の孫に跡目を取らせるところ……病気の夫を乾《ほ》し殺して、仇《あだ》し男と戯れるところ……生んだばかりの私生児を圧殺するたまらなさ……嫁女《よめじょ》に濡衣《ぬれぎぬ》を着せて、首を縊《くく》らせる気持よさ……憎い継子《ままこ》を井戸に突落す痛快さなぞ……そのほか大勢で生娘《きむすめ》を苛《いじ》める、その面白さ……妻子ある男を失恋自殺させる、その誇らしさ……美少年、美少女を集めて虐待する、その気味のよさ……大事な金を遣い棄てる、その愉快さ……同性愛の深刻さ……人肉の美味《うま》さ……毒薬実験……裏切行為……試斬《ためしぎ》り……弱い者
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