国大学の中の精神病科の病室に違いない。そうして私は一個の精神病患者として、この七号室? に収容されている人間に相違ないのだ。
……私の頭が今朝、眼を醒した時から、どことなく変調子なように思われて来たのは、何かの精神病に罹《かか》っていた……否。現在も罹っている証拠なのだ。……そうだ。私はキチガイなのだ。
……鳴呼。私が浅ましい狂人《きちがい》……。
[#ここで字下げ終わり]
……というような、あらゆるタマラナイ恥かしさが、叮嚀《ていねい》過ぎるくらい叮嚀な若林博士の説明によって、初めて、ハッキリと意識されて来たのであった。それに連《つ》れて胸が息苦しい程ドキドキして来た。恥かしいのか、怖ろしいのか、又は悲しいのか、自分でも判然《わか》らない感情のために、全身をチクチクと刺されるような気がして、耳から首筋のあたりが又もカッカと火熱《ほて》って来た。……眼の中が自然《おのず》と熱くなって、そのままベッドの上に突伏したいほどの思いに充《みた》されつつ、かなしく両掌《りょうて》を顔に当てて、眼がしらをソッと押え付けたのであった。
若林博士は、そうした私の態度を見下しつつ、二度ばかりゴクリゴ
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