倍大きな海蠍《うみさそり》の鋏《はさみ》が詰め寄って来る。スワ又一大事と身を飜えして逃げようとすると背中から雲かと思われる三葉虫が蔽いかかる。横の方からイソギンチャクが毒槍を閃《ひら》めかす。その間を生命《いのち》からがら逃出して、小石の下に潜り込むと……ブルブル。ああ驚いた。情ない事だ。コンナ調子では未だ安心して生きておられない。一緒に進化して来た生物仲間は物騒だというので、自分の身体を固い殻で包んだり、岩の間から手足だけ出したりしているが、自分はあんな事までしてこの暗い、重苦しい水の中に辛棒しているのは厭《いや》だ。それよりも早く陸《おか》に上りたい。あの軽い、明るい空気の中で自由に、伸び伸びと跳廻《はねまわ》られる身体になりたい……と一所懸命に祈っているとその御蔭で、小さな三つ眼の蜥蜴《とかげ》みたようなものになってチョロチョロと陸《おか》の上に匍《は》い上る事が出来た。
 ……ヤレ嬉しや。ありがたや……とキョロキョロチョロチョロと駈けまわる間もなく、今度は世界が消え失せるばかりの大地震、大噴火、大海嘯《おおつなみ》が四方八方から渦巻き起る。海は湯のように沸き返って逃込む処もない
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