ここまで進化したら天下無敵だろう。オレサマ以上に進化した奴は他にいないであろう」
と安心して、自惚《うぬぼ》れ切った奴が、そうした得意時代の姿をソックリそのまま、スポンジ、貝類、魚、鳥、獣《けもの》という風に、それぞれの子孫に伝えて来るうちに……ドウダ……いつの間にか今日の通りの複雑多様、千変万化のありとあらゆる生物界を、諸君の眼の前に展開させて来たではないか。
……ところで見たまえ。
コンナに色々と千差万別している動物たちの中でも、進化の度合いの極めて低い、海月《くらげ》以下の動物連中は、御覧の通り脳髄とか、神経|粒《りゅう》とかいうハイカラなものを持っていないだろう。大昔の通りに全身の細胞同志の反射交感作用でもって、あらゆる感覚を全身同時に意識し合いつつ、考えて、動いて、喰って、寝て、生きているだろう。
ところが吾々みたように高等複雑な進化を遂げた動物になって来ると、御承知の通り、意識の内容が非常に立て込んで来る。細胞同志の距離間隔《へだたり》もだんだんと遠くなって『あんな処まで俺の身体《からだ》かしら』なぞと、湯槽《ゆぶね》の中で趾《あしゆび》を動かしてみる位にまで長大
前へ
次へ
全939ページ中275ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
夢野 久作 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング