のだ。
 赤い主義者は、その党員の一人一人を細胞と呼んでいる。それと同様に細胞の一粒一粒を人間の一人一人と見て、人間の全身を一つの大都会になぞらえると、脳髄はその中心に在る電話交換局に相当する事になる。そうしてソレ以外の何物でもあり得ない事がわかるのだ。

 ……それでもまだ合点《がてん》が行かなければ吾輩、ポカンと一緒にこっちへ来るがいい。時間と空間のあらん限りを馳けめぐって、脳髄の正体を突止めて行ったポカンの苦心惨憺の蹤跡《あと》をモウ一度くり返して辿《たど》ってみるがいい。

 まず第一に脳髄が如何なる処から、如何なる理由の下に、如何にして生まれて来たかを探るべく、アタマ航空会社専用の超スピード機『推理号』の銀翼の間に、吾輩アンポンタン・ポカンと相並んで同乗するのだ。そうして爆音勇ましくアタマ飛行場を離陸すると、無限の時空を一気に翔破《しょうは》しつつ、諸君の眼下に横たわる雄大、荘厳を極めた万有進化の大長流を六億年ほど逆航するのだ。
 見たまえ。……現在の人類全盛の世界は一瞬間に未来の夢となって、マンモス、エレファス、ステゴドンなぞいう巨獣が、時《とき》を得顔《えがお》にノサバリ
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